Verbose

本日のお題:自然が一杯 (2) 〜楽園の鳥〜タフでしつこくて暢気な奴

極楽鳥花

Bird of Pridise、日本名「極楽鳥花」というのが写真の花。
自然が一杯シリーズの第二弾は、ちょっと虫には"Bye for now"。見た目もう少しマシな(主観の別れるところだが(^^;)鳥の方へ行ってみようと思う。 題して「楽園の鳥」、副題は「タフでしつこくて暢気な奴」。(なんか人間でもいそうだ。^^;)

写真の花の名前は、かつてはそのままハワイの鳥に当て嵌められた。つまり、ハワイには蛇などの天敵がほとんどおらず(人間を除いて)、文字通り鳥にとって楽園の島だったのである。 (残念ながら交通手段の発達は鳥の天敵も運ぶ役割を果たしていて、現在のハワイはかつてのような『完全な楽園』とはいえない)

私は毎朝鳥の鳴き声で目が覚める。チュンチュンなどという可愛いらしくも控え目なのではなく、 ホーロッロッロッロとか、キョロンキョロンとか、窓辺のすぐそばの木にとまって声高らかに、声量豊かに朝を告げてくれる。 それはそれで、ハワイらしさを実感させてくれるもの。一時帰国してホノルルにまた戻ってくると、鳥の鳴き声の種類の多さが改めて良く分かる。

種類も多い鳥のなかでも、タートル・ダフ(亀鳩)はごく有り触れた鳥で至る所で目に付く。鳩と名前がついているが、ムクドリよりも小さく雀より大きい。 体色は灰色で、小さい頭に小さいブルーの目そして長い尾を持つ。 繁殖力は抜群で、これが人間とぶつかるもとになる。

亀鳩は人の住まい近くに平気で巣を作れるタフな(鈍いとも言える(^^;)神経の持ち主。少々の音など屁とも思わないらしい。友人はコンドミニアムに備え付けの乾燥機排気筒の中に巣を作られ、大騒ぎだった。

週末旅行をして帰ってくると、やることは洗濯、ついで乾燥。 (たとえ燦々と照る太陽と絶えず吹く貿易風があろうとも、乾燥機を使うのがアメリカ流。ただし、移民や低所得者層の住む地域などは別。ちなみに、私も外に干す派。 お金の節約以前に、これだけの日差しと風を使わないなんて勿体ない気がする。嗚呼、貧乏性!)
―――スイマセン、脱線。
友人も当然乾燥機を使い始めた。使っている最中の乾燥機は結構な音がする。ドラムを回転させ、熱風を絶えずドラム内へ送り、排出する。ゴオンゴオンというモーターの回転音に衣類の音も加わって遠慮なし。

乾燥機から衣類を取りだし畳んでいると妙な音が聞こえてくる。ガサガサとかゴトゴトとか。最初はネズミかゴキブリ(成りがでかいので、かなり音をたてる)かも、とキョロキョロしたり、箒を構えて部屋中点検したそうな。 しかし、原因は分からない。

この友人は仕事をしながら学生業もやっていたので、洗濯はいつも一週間〜10日単位のまとめ洗い派。で、しばらく洗濯機も乾燥機も使用しない日が続いた。

どうもその間に亀鳩は着実に巣作りに勤しんだらしく、ある日ピーピーという少し高い鳥の鳴き声が聞こえてくる。それも、まるで部屋の中に巣があるようにえらく近い場所から。 ここに至ってはじめて、乾燥機の排気筒に目が行った友人が僅かなすき間から覗くと、なんとその向こうに亀鳩がいる。それも大層居心地よさそうに、夫婦で巣に鎮座ましましていたそうな。

これをほっておくと、亀鳩が持ち込む羽虫やその他が当然すき間を伝って家のなかに入ってくる。それに、鳩の糞や羽根の埃もたまる。
何とか自発的に退去して貰えないかと考えた友人は、排気筒のすき間から煙草の煙を流し込む、壁を叩いてみる、乾燥機を回す、等々色々やってみたそうだ。

ところが、亀鳩夫婦は全く動じない。微塵も出ていく気配が無く、これで雛でもできたらマスマス居座り続けるだろう。とうとう彼女は大家と連絡をとり、巣の除去を依頼。排気筒の外側に網を張ってもらって二度と巣作りに中には入り込まれないようにしてもらったそうだ。
tori1 tori2 tori3 tori4 tori5

この話を聞いたときは他人事の面白い話題くらいにしか思わなかった。私はむしろ、亀鳩の図太さに感心した位である。
ところがところが、亀鳩の繁殖力は図太さだけでは説明できなかった。私がアパートに住んでいた当時、亀鳩の天晴れな粘り強さを知らされることとなった。

事の起りは、隣に引っ越してきた人のご挨拶。そのお宅のバルコニー(ハワイではラナイと言う)にある冷房機の上に亀鳩が巣を作っていたとか。 前の住人はあまり頓着する性質ではなかったらしく、亀鳩と共同生活だったらしい。
おばさん曰く、とても汚い巣だったのでそれを取り払い、冷房の機械の場所を鳥が入れないように囲いを造った。で、見ていたら、亀鳩が戻ってきて元の場所に入れなかったので隣のお宅のラナイの方へ飛んでいった。 だから気をつけたほうがいい、とワザワザのご忠告。

その時はさして気にも留めておらず、まあ、他に行く所もあるだろうしと思っていたのに。よほどそのアパートかラナイが気に入っていたらしく、本当に我が家の冷房機の上が標的になった。
学校から帰ってきてラナイに出ると、なんだか一杯木の枝が落ちている。その前日、かなり風が強かったのでそのせいか?と首を傾げながら掃除をした。
で、翌日みるとまた木の枝が…。そこで初めて、これはもしかするとと上をみれば、な〜んとちゃっかり冷房機の上に亀鳩が夫婦でとまっていて私を見下ろしている。

おい、家主を高いところから見下ろすってのは、礼儀知らずもいいところだぜ!と鳩に言っても通じない。ばかりか、掃除しても掃除しても連日巣の材料になる枝やら、針がねやら、そのほか私の目にはゴミとしか写らないようなものをせっせと運んでくるのだ。

冷房機と天井の間の空間がいたくお気に召しているご様子で、そこに巣を作ろうという魂胆見え見え。でも、ブキッチョなのか、取りあえず材料を近くまで運んで確保してそれからゆっくり巣作りに取りかかるつもりなのか、巣は全然形になっていない。
私の方も、形の出来た巣から追い払うのも忍びないので、持ち込まれる材料は片端から掃除して捨てていた。それでも、連日やって来る。枝やら持ってくる。 その繰返しを3日ほど続けて、とうとうこちらが先に音をあげた。

こうなれば、実力行使あるのみ!
要するに、冷房機と天井のすき間がなくなればいいわけで、そこに強力なガムテープを縦横に貼って立ち入り禁止にしたのである。 翌日学校から帰ってきてチェックしたら、枝も落ちていなかったのでこれはやった、と喜んで冷房機の上を見てみたら、なんとガムテープに灰色の羽毛や羽根がついている。

亀鳩夫婦は、ガムテープをくぐり抜けてもそこに居座ろうとしたらしいのだ。仕方ないので、また新しくガムテープを張り巡らして、翌日に備える。 で、また羽根がついている。
この繰返しを4〜5日も続けただろうか、ある日やっとガムテープに羽根がついて来ないようになり、それでも心配で更に3〜4日様子を見てついに勝利宣言を出すことが出来た。

この粘り強さがあればこそ、どこにでもいる亀鳩、の地位が確保されているに違いない。
でなければ、道端で車に轢かれてペチャンコになる鈍臭さを補えないだろう。
(よくある亀鳩のれき死体を更にペシャンコにする手伝いなどしたくもない。車を運転する側としては本当に嫌なのだ)
以前、カナダの学生が、ハワイは人も動物も緊急事態の感覚 (sense of emergency)に欠けている、と文句を言ったことがある。 その時は、なんて失礼な偏見!と思ったのだけれど、今はちょっとばかり彼の言いたかったことが分かる気がする。(亀鳩に関しては、ということで)
tori1 tori2 tori3 tori4 tori5

亀鳩は本当に人が近づいても逃げない。車を出すときも、その辺りに蹲っている亀鳩は決して動こうとはしない。よほどこちらが積極的に追い払いでもしない限り、ここがいい!と居座り続けるのである。 轢くぞ!と脅しても屁の河童。で、本当に轢かれる奴も当然出てくるわけだ。

幸いにも、私はまだ亀鳩をひき殺したことはない。頼むから、私のシロコちゃんの前からは速やかに退去してくれよ、といつも心の中で亀鳩さんにお願いしている。

(2001.11.28)



 

Top | About | Verbose | Diary | Recipe | Photo | Link | BBS | Mail

Writing Copyright (C) 2001-2002 A.S. Kijima. All rights reserved.
Photo: (C) Hawaii Web & Office Otomaru
Animation: (C) SKY

[PR]動画